[コラム]『成長を促す受験でありたい』~「自覚・自立・責任」を旨に人間として大きな成長を ~

私どもの塾では「勉強よりも大切なものがある」ことを日々の指導の根幹として、子供たちに伝えています。

子どもは受験勉強に取り組む中で、できない自分、弱い自分に直面し、葛藤する筈ですが、「勉強よりも大切なものがある」言ってあげることで、勉強のできることが絶対的最上位の価値であるという強迫から開放されて、いじけたりしないでのびのびと難しい勉強に取り組み続けることができるようになるのです。

頑張れる自分を見ることで、子どもは自分に自信を持ち、自己期待を大きくするのではないでしょうか。これこそが、途中で勉強をあきらめずに最後まで頑張り抜く「合格する子」を育てるメンタルティーだと思います。

私どもの塾では「自覚・自立・責任」という言葉を教室の壁に貼って、生徒たちがいつもその言葉と向き合うようにしています。「自覚」とは、できない自分・弱い自分に気づくことです。「自立」とは、自分の頭で悩み考え実行することです。そして「責任」とは、自分のしたことですから、その結果について良くも悪くも自分のものとして受け入れるということです。

できないことや失敗に必ず理由を付けたり、他人や他の何かのせいにしているメンタリティーからは成長は望めません。

自分でやって、その結果は自分の責任として負うという気概が子どもを育て、成長させます。学力も伸ばします。何より自分でやるのが一番楽しいし、達成感も大きいに決まっています。子どもの表情を良くし、そこにやる気も生まれます。自信も膨らむのです。

 

親の口出し過ぎは、子どもの自信をなくさせる

中学受験とは、これまでにどういう子育てをしてきたかの最初の証明の場と言えます。

厳しい言い方ですが、志望校への合格・不合格という結果に向けて、親子共々追い込まれていく訳ですから。親のエゴだって出ます。それぞれのご家庭で親子のかたちを確認する機会でもあり、試される場でもあると肝に銘ずべきです。

合格する子にしていくためには子どもの自立を促していかなければなりませんが、その妨げとなるのは親が口を出しすぎることだと思います。点数のことばかり言われて否定されれば、子どもは萎縮してしまい自信をなくすばかりです。これは偏差値の高い子どもにも多くみられます。過干渉からは、意識が萎えるばかりで自立の芽は育ちません。

子どもの成績を分析し、ミスを細かく指摘する親がいます。それでもミスはなくなりません。何度でも同じミスを繰り返すものです。そして、親はそれを何度も叱るでしょう。子どもは反発し、いじけるばかりで良いことは一つもありません。親が教えているうちは、子どもは本当の意味では気づくことができないからです。

どうしたら「ケアレスミス」がなくなりますか? という質問を多くいただきますが、親子で「ケアレスミス」と呼ぶ「致命的」なミスを一枚の答案に連発する子どもの親に過干渉が多いものです。親の過干渉と子どもの注意力は反比例するものなのです。

 

 安心して失敗できる環境を

失敗することを恐れる子どもが沢山います。親が失敗をうるさく叱るからでしょうか。

出来た・出来ないの結果ばかり、点数ばかりを気にして、途中の思考過程を振り返ることをしようとしない。親の方を向いて答えることばかりに気をとられて、自分の頭で考えをまとめる習慣を奪われている子どもは実に多いものです。

黙々と取り組む集中力が人間を育てます。ごまかしは叱っても、できないことを叱ってはいけません。安心して失敗できる環境こそが子どもにとって大切なのです。

自転車は買い与えた当初は危ないですから補助輪を付けます。しかし、付けたままではいつまでも上達しません。転んで痛い思いをして、多少は怪我をしたとしても、早く補助輪を外した方が、たちまち自転車に、しかも上手に乗れるようになるでしょう。その危うさが人間を育てるのです。補助輪を付けているということは子どもを本当の意味で信頼していないということでしょうか。それに親の心配性が重なっているからでしょうか。

 

子どもを理解し信頼すれば突き放すことができる

小学3、4年生の時期に子どもの世界は、これまでの家庭中心の世界から、外の世界での色々な人との関わりを通じて大きく広がります。言わば「離乳の時期」であり、ものごころつく時期なのです。

自立していくためには他人とのやりとりが大切です。他人に褒められたことに喜びを感じて、またやろうとするところから自立が始まるのだと思います。自分の考えや気持ちを相手にきちんと伝えて自分を正しく理解してもらうことは自分の責任だということを、是非親から教えておいていただきたいものです。

理解されていると思うと、人はやさしくなります。一所懸命に応えようと、色々な形で表現しようとするでしょう。これがコミュニケーション能力を高めることになります。コミュニケーション能力の高い子は、間違いなく合格する子です。

親が子どもの自立を促すようなボールを投げること。その際には、形として子どもを突き放すということになります。それができるのは、親が子どもを理解し信頼しているからです。

子どもは親が見守ってくれているということを理解できれば、後顧の憂いなく、勇気を持って前に進むことができるでしょう。これが中学受験においての自立につながるのではないでしょうか。そして、これは中学・高校に進学してから、学力はもちろん人間としてさらに成長していくための必須の条件であると思います。大人への第一歩です。

中学受験で子どもがどうなるか心配なのもわかりますが、子どもの自立を望むのであれば、子どもを信頼すること、そしてやさしく見守ることが一番なのです。