[コラム]『赤ずきんちゃん気をつけて』~天国と地獄~

~天国と地獄~

月に一度、娘の通う小学校で本を読む。
いわゆる、「読み聞かせ」のボランティアをしているのだ。最近では小さい字が読みにくくなってきた自分にムチを打って、どんな本がいいか調べ、図書館に行き、本を選ぶ。楽しみのひとつである。
先日読んだのは「ランドセルは海をこえて」という本。ランドセルをアフガニスタンに送り続けている写真家、ジャーナリストの書いた本だ。もう高学年だし、昔話も美しい絵の本もいいけれど、世界の子供たちの現実を写真でみせてもわかる年頃なのではないかと思ったのだ。

日本から贈られたお古のランドセル。中には新品の文房具も入っている。
アフガニスタンの子供たちの輝く笑顔。
私が思う以上に、目の前の子供たちは真剣に聞いてくれたように思う。担任の先生も、「私たちの普段の生活は決して当たり前ではないということが子供たちに伝わったと思う」と言っていた。

こんなとき、水が入った水槽に棒を入れると水面は何センチ上がるかという立体図形の問題を前にして、私は自分の職業の意味を深く考えることになる。

勉強するってなんだろう?
頭がよくなる、って、どういうことだろう?
偏差値が上がるとどんなイイコトが訪れるのだろう?

恐らく答えは1つではない。絶対に。人間の数だけ考えはあって、親の数だけ子供の進路はあるのだと思う。

平和な日本に感謝しないはずはない。でも、そんな日本の子供がすべて天国にいるか?そうとは限らないと思う。学校の課題、中学受験、よかれと思って準備されていることの中にも、彼らなりの地獄はあると思う。
戦争で何もなくなった荒野での青空学校。先生一人、黒板一枚、生徒たくさん。そんなアフガニスタンの子供たちには地獄しかないのか?いや、そんなことはないと思う。あのあふれる笑顔、勉強ができるよろこび。字が書けるようになる、計算ができるようになる。わかった喜びは、何にも代えがたいと思う。

自分の置かれた世界で生きていくための方法を見いだすため、算数は、勉強することは役に立つんだということを少しでもわかってほしい、それが私の役目なのかなと、今度は立方体を切断する問題を解きながら私なりの答えに行きつく。

以前解けなかった問題が解けた生徒に、すごいじゃない、これ解けたんだ!と言ったら、「先生と授業中にどうやったんだっけって思い出しながら解いたらできたんだ!」と言う。
嬉しかった。これが進歩だ。成長だ。こんな体験を、生徒すべてにさせてあげたいと思う。

青空教室の写真のなかで、みんなが黒板を見ている中、何人かカメラマンが気になってこちらを見ている。アフガニスタンにもよそ見をする子がいて、子供は世界中一緒だなと、なんだかほっとします。