[コラム]『赤ずきんちゃん気を付けて』~先憂後楽~

~先憂後楽~

 

娘の行動にイライラすることが多い。

とにかく幼い頃から、行動が遅いのだ。身支度、準備、そういったことがスムーズにできないのだ。
いや、行動が遅いのではない、集中してやらないからいつまでたっても終わらないのだ。

歯を磨きながら話したり、着替えの途中で本を読み出したり。学校の準備が終わらないまま他のこと
に没頭したり。寄道や脱線が本当に多いのだ。

やりはじめたらすぐ終わる宿題が、取りかかるまで時間がかかるので終らない。そして、あと、鉛筆を
削るだけでおしまい!なのに、これはあとでやろうっと、と、やめてしまう。物事をとにかく「終える」
ことができない。

 

私はどうだったかといえば、子供のころ、そして今も、いかに遊ぶ時間自由時間を捻出するか、という
ことを考えている。義務はちゃっちゃと終わらせて、心置きなく過ごす開放感。

だから、私は娘の行動が全く理解できない。今日も呪文のように唱える。

 

ねえねえ、先憂後楽だよ。その方がよっぽど、のびのびとした気持ちになるよ。終わったら好きなように
過ごしていいんだよ。鉛筆削っちゃいなよ。

 

先憂後楽。心配事は先に片付けて、後で楽しむ。

 

中学受験。
遊びたい盛りの子供を机の前に座らせる難しさ。上手くやらないと、鬱屈した子供になる。家庭不和も
引き起こしかねない。幼稚園から大学までの受験のなかで一番デリケートなのではないかと私は思って
いる。中学受験するには、それなりの覚悟が必要だ。

 

先憂後楽。
計算、一行題、10個毎日やりなさい!来週テストよ、諺と漢字、復習しなさい!それが済んだら遊びに
行っていいよ。

でも、そんなことができるならどんな学校にも入れるよなあ、とも思う。
10問でしょ、できるじゃないと親は思う。諺も漢字も身の回りに溢れている。わかれば楽しいよ、
教師の私も思う。

でも、そうはいかないこともある。それをクリアすれば、今のうちに、鉄は熱いうちに叩けば、それなりに
形になる時期。大人はそう思うけど、子供はそう思わないのだ。
動きたい、のは、本能なのだから。その辺りをわかってあげつつ、上手く時間をやりくりして、効率良く、
学ぶ姿勢を整えていってあげたい。

 

これから中学受験を迎える小学生、そしてお父さんお母さんにお伝えしたい。

 

中学受験は、キリがないのです。
時間をかければ、それだけ学力が、偏差値が上がるのか?
それは違うと私は思っています。
5歳からサッカーをやればみんなサッカー選手になれるのか?3歳からバレエを習えばみんなバレリーナに
なれるのか?

そんなわけはありません。

 

時間をかければ達成されることとそうではないことがあるのではないでしょうか。

 

費やした時間と比例して学力がのびるのであれば、こんなに楽なことはありません。アルバイトと同じです。
自給¥1050。4時間なら¥4200。6時間なら¥6300。
今月の収入の予定がたてば、やりくりの目処もたちます。
欲しかった服がかえるか、行きたかったディズニーランドに行けるか行けないか。
費やした時間だけ、楽しみも増えるというものです。

 

でも、すべての受験勉強はそうではありません。
早く始めたから、たくさん勉強させたからしたから、よい結果を招くか?
もしそうならいいなあと思うけれども、残念ながら現実はそうではない。彼らはただの12歳の子供なのです。
どんなに準備しても至らないこともあります。

 

量ではなくタイミングと質。それが大切なのではないかと私は思っています。

 

このドリル、もし6問集中して全問正解だったら、あとの4問はやらなくていいよ!!(もし1問でも
間違えたら全部やらなくてはならないという恐怖の罰則つき)
と言うと、子供はとてつもない集中力を発揮します。
これなら、先憂後楽、選び抜かれた問題をやればあとは自由!の目処がたちます。集中する習慣が
身に付くというもの。集中して得た結果に楽しくなり、少しずつ自然に勉強に興味が湧いて、自信も
つく。螺旋階段を一歩一歩自分で昇ることができるようになる。

 

楽しく、ためになるように、興味を沸かせるように、自信が持てるように、成績が伸びるように、
どうやってこの子供にアプローチするか?

教師としてそれをいつも心がけて、授業しているけれど、どの子供もみんな違うから、何年やっても
試行錯誤。

 

今年も新しい年度が始まり、生まれたてのヒヨコのような6年生を前に「成長を促す受験でありたい」
という原点に立ち返りたいと思います。