[コラム]『赤ずきんちゃん気を付けて』~お弁当~

~お弁当~

 

人のお弁当が気になる。

私は算数教師であると同時に、主婦でもあるので、塾のお弁当の時間に、子供たちが
どんなお弁当を作ってもらっているのか、とても興味があるのだ。この職業でなかったら、
いろいろなお弁当を見る機会はなかった。あらかわいいお弁当箱。ダッフィーが蓋に
ついているじゃない!あれ、そのお弁当、保温できるの?温かいの?すごいね、美味しそう。
今日もお弁当を覗きこんではみんなにけむたがれる。先生が見てると食べにくいよ!

娘のお弁当は遠足の時くらいしかつくらないから、1年に3回か4回だろうか。わ、明日
お弁当、何にしよう買い物に行かなきゃ、ということから始まり、当日朝はいつもより
1時間は早く起きる。昨夜多目に炊いておいたご飯。ブロッコリー、プチトマト(お弁当の
救世主!とりあえず詰めれば彩りも豊か)。卵焼きを作って、ささみの醤油漬けを焼く。
冷ましている間に、フルーツを切って、小さなタッパーに詰める。お弁当箱は、ナプキンは、
ああお箸も!…大騒ぎだ。

塾の子達は、日々お弁当だ。お家の人は、週に何回、お弁当を作っているのだろう?
受験期が近づけば近づくほど、毎日毎日お弁当。私のように大騒ぎしていたら、
とてもじゃないけれど回らない。
したがって、家の夜ご飯をそのまま詰めることになる。餃子、豚のしょうが焼き、
はじっこに昆布の佃煮。何て美味しそう。見ているだけで私もお腹が空いてきてしまう。
女の子のお弁当は、やはり華やかだ。お弁当箱もお箸箱も、赤だったり黄色だったり。
男の子のお弁当箱は質実剛健。たくさん入ります、ご飯ギッチリ入っています、肉勝負です、
といった感じ。夏、ざるうどんを持ってきた強者がいた。めんつゆを密閉式タッパーに
入れてきたのはいいが、麺が固まってほぐれない。そうだ!といって、洗面所で水を
通していた。何て頭のいい。この子は、冬にはゴマ味噌ダレジャージャー麺を持ってきていた。
保温式のタッパーで。すごい。

ある女の子に聞いてみた。
今日のお弁当何だろうね、楽しみだね。
返ってきた答えは「どうせ冷食ですから」

冷凍食品をバカにしてはいけない。最近の冷凍食品はすごいんだぞ。味はもちろん、
冷凍のまま入れても食べる頃には普通の肉団子になっていたり、あらかじめカップに
きんぴらだったりひじきの煮物が入っていて、そのままお弁当に入れるだけ。隙間を
埋めるにはもってこいなんだぞー、というのはもちろん、作る側の都合だけれど、
でも、毎日毎日、全部手作りなんて無理だ。いくらなんでも。愛情の問題ではない。
無理をしてはいけない、ということなのだ。

愛情弁当=手作り弁当
という考え方は、いつか破綻する。と、私は思っている。子供が頑張って勉強しているから。
私も頑張ってお弁当を作ろう。間違ったことではないけれど、真面目に真面目にやりすぎると、
息が詰まる。親も、子も。

こんなに私が頑張ってお弁当作っているのにちっとも勉強しない!成績が上がらない!
そんなの知らないよ!もうお弁当なんか作ってくれなくていいよ!お金くれたら何か買うから!

そんな会話が聞こえてくる。

パン屋のお総菜パンの日があってもいい。500円を渡して、今日はコンビニで買ってね、
の日があっても、冷食満載の日があってもいいと思う。作る側が負担に思いすぎないことが、
長い目で見て大切なことなのではないかと思う。手作りだったり、買ったり。緩急をつけて
いろいろな日。そうすればマンネリも招かない。

ただいま、と子供が帰ってきたとき、お家の人がゆったりと迎えてあげることができるのであれば、
子供は安心して毎日を過ごし、受験勉強に向かえるのではないかと思う。

たかがお弁当、されどお弁当。
大切だけど、それに振り回されてはいけない。
塩梅が難しい。

子供の頃、お弁当の卵焼きを友達と交換したときに、あまりにも味が違うので驚いたことがある。
友達は塩味、私のは砂糖味。
それにしても作ってもらったお弁当は、何て美味しかったんだろうと、今やっと、かみしめています。