華麗なるバスタイム
入浴時間は何分か、という話になった。
授業が終わって帰ると9時近いんでしょう、それからご飯を食べてお風呂に入って学校の準備。毎日のことだからダラダラ時間をかける習慣がついてしまうととってもよろしくない。みんなのお母さんもお父さんも君たちの体調管理にとても気を配っていると思うよーなんて話していたら。
「先生!僕、シャワーで2分です!」そりゃあ素早いねえ!
「えっ、僕、90分」90分?!何してるの?「実験とか。」
シャンプーとコンディショナーを混ぜたらどうなるのか。あと、水を一杯溢れるまで洗面器に入れたりとか。
‥これを無駄と言ってはいけないのだろう。おそらくニュートンだってアインシュタインだって、幼少期には世にも愚かと思われる「無駄なこと」をたくさんしただろうから。柔軟な発想からしか世の中を覆す大発見はないのだろうから。
「先生、僕は30分!ずっと熱唱してるよ!」
エコーのきくお風呂場で歌うのはさぞかし気分がいいのだろうね。その様子が容易に想像できて笑ってしまう。
毎年入試問題は更新されるので、私はこの歳になってももちろん勉強している。問題を解き続けている。特に御三家と言われる難しい学校の問題は毎年「そうきたか!」、あの手この手で新しいタイプの問題を出してくる。それがじわじわと次年度から他の学校でも出題されトレンドを作っていく。パリコレで発表された作品がその流れを汲んで一般人の間でも流行するように。
数々の難問に、気がつくと机の前でぐつぐつと煮詰まってしまうこともある。
方眼紙に立方体の切断の様子を書いてみる。→ダメ。この図ではどうしても三平方の定理に持ち込むしかない。まだ禁じ手なので使えない。
各方面から見える平面図にしてから相似を利用してみる?→ダメだ、平行面じゃないから相似じゃないじゃん!
ぐつぐつぐつぐつ。
やーめた。後でまたやろうっと。
そう、煮詰まったらいくら机に向かっても無駄。お風呂にでも入ってこようっと。
箱根の湯とか草津の湯とか。適当な入浴剤を入れてぼーっと浴槽に浸かっていると、先ほど解いていた問題が湯気に浮かぶ。
あ、なんだ、全体から三角錐を4つ引けばいいだけじゃない、重なった三角錐の高さはすでにでてるんだった。
なんの脈絡もなく棚ぼたみたいに正解が転がってきた。
机に向かっている時だけが勉強しているわけではないんだな。
その日の出来事や授業を、入浴中に振り返ること。コレ、おススメです。
熱唱するのもストレス発散。あまり遅い時間に大熱唱はご近所に迷惑にならないようにね。