成蹊中学校入試報告会 2021年5月12日
1.成蹊の教育方針
新学習指導要領が始まる中、これから求められる力は以下のようなものである。
・基礎力 (基礎学力、言語・数量・情報スキル、生涯学習力、リベラルアーツ、知的好奇心、探求心、自学力、持続力、「律する心」)
・対応力(コミュニケーション力、読解力、共感力、想像力、発想力、表現力、発信力、情報収集力、情報分析力、多面的思考力、批判的思考力、論理的思考力、数学的思考力、問題発見力)
・行動力(問題解決力、計画力、挑戦力、「巻き込む力」)
「解答の無い社会であっても、新たなものを想像する発想を持つ人材の育成」を目指す。
0→1(ゼロ トゥ ワン)の発想を持つこと → そのためには探究活動が最適であり、探究活動を組み込んだ授業や学校行事を行う。
探究活動で必要なこと
(1)「なぜ?」から始まる!
(2)調べる!
(3)足を運ぶ!
(4)仮説を立てる!
(5)解決方法を話し合う!
(6)解決案を提示する!
(7)実証実験する!
(8)発表する!
生徒個々による探究活動には、学校内外にてエビデンスが取れる場(プレゼンの場)を提供。
学校行事では事後学習を重視。修学旅行後にはARによる寺社紹介や旅行プランを作成。
「言葉」という力を身に着ける。
右手にロジック(論理)を、左手にレトリック(修辞)を
・ロジック 言葉の正しい運用の仕方や論理の構築方法を学ぶ → ディベートの活用
・レトリック 言葉をいかに魅力的に伝えるか →プレゼンテーションの重要性
探究活動の一例:「桃李」や生徒会活動
「美とは」の発表、東北ボランティアについてのポスターセッション
探究活動を取り入れた授業実践の後、教員間での良いところの共有→教員研修と授業研究の実施の積み重ね
授業を大切にする
・先生方との面談(1学期)
・研究授業の実施(2、3学期)
・授業見学(2学期)
・高2生徒との全員面談(2、3学期)
・授業アンケートと教員研修の実施(年間2回)
成蹊は、人を創る
「建学の精神」
①個性の尊重 → 多様性に寛容な人間
②品性の陶治 → 周りから信頼される人間
③勤労の実践 → 価値観と行動力を備えた人間
平和な社会の実現と発展のために、誇りをもって貢献できる生徒を育成する。
①個性の尊重 リベラルアーツ(幅広い教養)の重要性
ブルーム「教養の役割とは、他の見方・考え方がありうることを示すことである。」
瀧本哲史「学びは答えを知ることではなく、先人たちの思考・研究を通して新しい視点を手に入れることだ。」
これらの言葉は多様性を実現するためのリベラルアーツの重要性を示している。これを身に着けさせるために、成蹊では生徒たちに本物に触れさせることによって心の琴線に触れる、実践を重視した教育を行う。
・タケノコを実際に掘って、調理実習 ・本物のカモノハシのはく製
・天体観測 ・成蹊気象観測所 ・生物の授業(サメの解剖) ・深海魚特別講座
②品性の陶治 共感力を育てる
サスティナブル(持続可能)な社会の実現に向けて、成蹊では学園全体がユネスコスクールに認定されており、ユネスコスクールとしての強みを活用して、SDGs・ESD活動の推進を行うとともに生徒たちがSDGsのワークショップを国語の授業として行う、ユネスコスクール関東大会の参加者を募集するといった実践の場を設けている。
③勤労の実践 社会とのつながりを理解する
成蹊では、企業との連携や卒業生の協力で生徒たちが実際の社会活動を実践することができる。大正製薬とコラボして実際にリポビタンDのボトルデザインを生徒たちが行う授業や、社会で活躍する卒業生たちの講演、文化祭での企画「卒業生に聞く!」によって、生徒たちは社会貢献の実例に触れることができる。
成蹊だからこそできる様々な体験
成蹊では、恵まれた施設と自然環境のもと、
①全員対象型
・生徒中心で行われる行事活動
・成蹊小・中・大とのコラボレーション
・多様な進路で活躍する卒業生とのかかわり
②生徒企画型
・生徒企画イベント
・活発な部活動や生徒会活動
③希望者参加型
・知的好奇心を刺激する幅の広い体験活動
・校内における国際交流体験
などといった様々な体験からリベラルアーツを重視した学びを得ることができる。
国際理解教育
成蹊では大正時代からはじまる帰国生教育が行われており、戦後まもなく開始した留学制度がある。専門教員を設けたアカデミックスキル口座やSAT講座、TOEFL講座などの充実したバックアップがあり、生徒たちは留学生・帰国生から刺激をうけて国際理解を深めることができる。成蹊との交流校は世界各地にあり、特にアメリカ ニューハンプシャー州の名門校セント・ポールズ校との交流は70年を超える。その他の交流校には、
大学:ケンブリッジ、UCデービス
アメリカ:チョート・エクセター
オーストラリア:カウラ
デンマーク:ルンステッド
スウェーデン:カルマーレ国際
などがある。留学した生徒からの留学報告会や校内でのエンパワーメントプログラムにより、国内の生徒も身近なロールモデルから学びを得ることができる。
2.成蹊の進路指導
*方針:「一人ひとりが自分の将来を考え、自分で進路を選択し、目標を実現していくことをサポートする」
*質の高い授業の提供=基礎学力の向上+進路選択のための材料の提供
・高校1年生:芸術科目を除いて全科目必修→幅広い教養の獲得
・高校2年生:必修授業+文系・理系のコース選択( 7時間)
→幅広い教養を獲得しつつ進路の絞り込み開始
・高校3年生:必修授業(中等教育の完成)+進路別の18のコース選択
高校三年時の文系・理系の選択比率はおよそ2:1
・高2学習旅行:少人数で関心あるテーマの旅行に参加→新たな興味・関心の発生
・演習・自由選択科目:高2・高3 入試演習や英会話、第2外国語・芸術など
*進路指導プログラム
・将来を考え、自分の進路を選択するための主体性醸成プログラム
・目標実現のためのサポート 継続性を支えるプログラム
海外進学者向けの個別進路指導
アカデミックアドバイザー、ライティングラボ など(ネイティブ・専任1名)
2021年の進路実績
成蹊高校の卒業生のうち、八割以上が成蹊大学への内部推薦資格を得ることができ、約三割(300人中100人程度)が実際に成蹊大学に進学する。
成績優秀な生徒は、他大学を志望しながら内部推薦の資格も得ることができる。
外部推薦の合格者は87名。
2021年の国公立大学現役合格者は12人、合計では21人。(東京、東北、筑波、東京外語、東京農工大に合格者)
私立大学では早稲田大学24人、慶応義塾大学17人、上智大学28人の現役合格。
その他、医学部医学科(現役10人)や歯・薬・獣学部(現役28人)への進学者が多い。
また、芸術系大学にも毎年一定数の進学者がおり、2021年は7人が現役合格。
3.入試実施状況と来年度の予定
男子は第一回2/1、第二回2/4ともに人気・倍率上昇 繰り上げ合格0名
女子は第一回2/1では倍率上昇、第二回2/4はチャンス拡大(倍率低下) 繰り上げ合格0名
来年度の予定
第一回 2/1 男子約45名 女子約40名 帰国生枠 若干名
第二回 2/4 男子約25名 女子約20名
国際学級 1/8 男女約15名
中二編入試 1/8 若干名
国際学級九月編入試 7/8 若干名
コロナに配慮して、中学一般入試、高校一般入試に限り2/24に追試験を設定。
条件
・新型コロナウイルスに感染している
・濃厚接触者となり、検査結果が出ていない
・発熱、倦怠感など幹線を疑われる症状があり、検査結果が出ていない
・法定感染症にり患している。
・入構時の検温で37.5℃以上の発熱がある
4.入試問題解説
理科: 物理、化学、生物、地学が一問ずつ出題される。問題の順序は解きやすさを考えて配置される。地学系の問いは1回目、2回目で類似した問題が出題されやすい。
問題作成の意図としては、(1)理科が好きな生徒(2)理科を勉強してきた生徒(3)学ぶ力のある生徒 を評価するための問題作りがなされる。
(1)では実験道具の扱い方の問題やグラフの読み取り問題、またシカの足跡などの生のデータから情報を読み取る問題などが出題される。小学校の授業などで実験・観察に積極的にとりくんでいることや日常目にする現象を理科的に考えることが求められる。また、鏡の映り方や影のでき方、電子レンジの加熱時間、アルミ缶のリサイクルマークについての問題など、日常見かける現象に興味を持ち、調べていることが求められる。
(2)基本的な知識を問う問題が少なくとも5割出題される。したがって、小学校でしっかり理科に取り組んできた生徒は十分合格圏内に入ることができるようになっている。
(3)では、受験者が聞いたこともないような生き物、設定の問題が出題される。ただ知っているから正解できる、といった問題ではなく、基礎知識から未知の現象について推論する力が試される。授業のような形式の問題も出題される。新しい知識について、問題文が授業だと思って問題を解くことが求められている。知識がなくとも問題文をよく読めば解けるように作られている。
知らない題材を恐れず、説明文やグラフをじっくり読みとり落ち着いてとりくむことが重要。
生物に関する問題の傾向変化
これまでは一つの生き物を中心に問題が展開されていたが、今はある設定(環境)に関する問題に変化してきている。例えば、「自然の循環について」「食物連鎖について」など。ただし、本質的に問われている内容は変わらない。
国語:出題方針は例年通り。
大問1では小説・物語文が出題される。二人以上の人物が登場し、登場人物の心情を問う問題が主に出題される。75文字以上の記述解答の問題が必ず出題される。先入観や経験、一般常識で答えるのではなく、本文をしっかり読んで文中の根拠から人物の心情理解を行うことが求められる。
大問2では論説文・評論文が出題される。小説・物語分よりも文章量が少なく、受験生にも身近な話題が提供され、筆者の主張を読み取る問題が出題される。記述解答では、質問された内容に対しする答えとして成り立っていること、文末の形を問題に対応させること(~から。・~こと。) が重要。よくある間違い方としては、ただ傍線部直前の本文を抜き出しただけで説明になっていない解答や、受験生本人の思い込みや常識で解答して、筆者の主張が読み取れていないものが多くみられる。
大問1・2(文章読解)の対策法として、本文を最初から丁寧に読み、登場人物や状況を把握しながら、設問の順番通りに読んでいく練習をする。作問者の意図する解答の流れに沿った解き方が理想的である。そのうえで、スピードも身に着ける。記述問題では、ただ文章を抜き出して答えとするのでなく、文中の言葉を要求に合わせて文章として再構成して自分の言葉で説明する。また、受験生にとって理解しやすい内容であったとしても、現実問題や常識と筆者の主張が同じとは限らない。文中の筆者の主張を軸に考え、文中の根拠から解答することを心掛ける。
大問3、漢字の読み書き問題5問については、丁寧に、はっきりと大きく書くことを意識する。対策は、読書習慣を身に着けておくこと、日記など文章を日常的に書くこと、常日頃丁寧に文字を書くこと。
社会:2020年度から、用語を答える短答式・選択問題と、資料の読み取りを伴う抜き書き・論述問題が明確に区別されるようになった。また、記述力重視の総合問題を一題に統一した。全体として、問題が形式ごとにまとまるように変更された。
この学校の少し独特な出題傾向を理解している受験生と、そうでない受験生との差が大きかった。10月、11月に行われる受験対策講座の受講が推奨されている。問題の中には理科と同様に問題文から新しい知識を獲得することが求められるものがあり、それができた生徒は高得点となった。基本用語を答える単答式問題では、用語の意味を理解していないであろう誤字は不正解とされた。
総じて、なるべく早く問題を解き切ろうとして問題文の読解・図表からの情報の読み取りをおろそかにした間違いが多く見られた。成蹊では未知の事象についてその場で知識を読み取り、学ぶことができる能力が重視されており、教科書の暗記では歯が立たない、言いかえれば知識を持っていなくとも問題文をしっかり読んで理解すれば解答できる問題(例えば、日本国憲法の内容について毎年問われる)が多く出題されるため、よく読み取る意識をより強く持つことが重要。論述問題では国語と同様に、ただ単に本文の一部を抜き出しただけの解答が多かった。抜き出しだけでは決して正解できず、自分の言葉で文章を書く力が求められる。
今後、問題文から知識を読み取る力、頭を使ってじっくり考える力を重視する傾向がさらに強くなっていくと明言されており、問題をじっくり最後まで読む意識が必須である。
算数:問題形式は例年通り。
大問1では計算問題(四則計算、計算順序、分数・少数の計算)、大問2では小問集合(特殊算、速さ、割合、図形、角度、面積、体積など)となり、ここまでで約50点。大問3以降は応用問題となる。
解答欄には解答のみを記入する。途中点は原則無し。ただし、約分忘れ、比が逆になっている、正解が複数ある問題で一部のみ正答などは、状況に応じて部分点を与えることもまれにある。
昨年度入試の振り返りとしては、三角形が正三角形であると勘違いしたり、扇形ではない図形を扇形だと勘違いしたりする間違いが多かった。応用問題である大問5や6については、長い文章を処理する力(ダイヤグラムなどを書き、問題の状況を把握することができるか)、複雑な図形や規則性に取り組む力(1つ1つの処理を間違えずに行えるか)がカギとなった。
出題方針は例年通り、文章問題と図形問題のバランスをとり、特定の分野に偏らないような出題となっている。難易度としては、小問集合では算数の基礎的知識の定着を見るための典型的な問題(どこかで見たことがある問題)が問われる。大問では、全問不正解になってしまわぬよう、(1)では取り掛かりやすい問題を、(2)、(3)では誘導を意識した問題が出題される。
成蹊中学では、10月・11月に学校説明会及び入試対策講座が行われる。ここでは成蹊中学一般入試の過去問を、出題4教科の先生がそれぞれ説明を行う。出題傾向の把握・対策に役立つ。